「PANORAMA-3」

宏明を見つめながら、奈々美に尋ねた。
「すぐにわかるわ」
奈々美がそう答えたのとほぼ同時に宏明が戻ってきた。笑顔で、左手に紙袋を持ち、やけに満足そうな顔を浮かべて。
「一樹、お前こないだ誕生日だっただろ。これさ、俺と奈々美で選んだんだよ」
宏明はそう言うと、持っていた紙袋を僕に手渡した。
「ねえ、開けてみてよ!」
奈々美が僕を見つめて、笑顔で話す。
紙袋の中には、バイク用のゴーグルが入っていた。バイクが好きな僕に合わせて買った、と二人は嬉しそうに話した。(当時、僕は十万円で買ったボロボロのSR400をカフェレーサースタイルにカスタムして乗っていた)
二人が僕のためにプレゼントを用意してくれていたことに、僕は静かに、ありがとう、と言った。その言葉には多分感謝の気持ちはあまり含まれていなかったと思う。
僕にとってそのプレゼントは嬉しい気持ちと同じくらい、いや、嬉しい気持ちよりも強かったかもしれない。憎らしい気持ちのほうが。
バイクに乗らない二人の独特のセンスによって選ばれたゴーグルは、文句など付けようのないものだったし、何よりも二人の気持ちが嬉しかったことは事実だ。ただ、僕の知らないところで二人が会っていて、仲良く会話をしながら街を歩く姿を思い浮かべると、僕は焦らずにはいられなかった。たとえそれが僕へのプレゼントを買うという名目だったとしても。
奈々美が以前から宏明に対して好意を抱いていることは知っていた。僕はそれを奈々美から度々相談されていたからだ。僕は奈々美から相談を受ける度に、奈々美の願いとは正反対の結末を想像した。そして、できることならば奈々美がいつか僕に振り向いてくれることだけを強く願った。
「何だかあまり嬉しくなさそうね」
不安げに僕を見つめる奈々美に、そんなことないよ、本当にありがとう。嬉しいよ。と僕は言った。宏明はそんなことおかまいなしといった様子で、ワインを口に運び続けた。目を閉じ、心地よさそうに笑みを浮かべ、今夜もやはり掴みどころのない表情。
それからしばらくして、奈々美と宏明は付き合いだした。ある日、突然宏明が僕の住むおんぼろアパートに来て、言った。
「俺、奈々美と付き合うことにしたよ」
と。

  僕には分かっていた。宏明が僕のアパートに来た時にはすでに。いや、もっと前から。奈々美と出会って、三人で過ごすようになって、奈々美が宏明を意識するようになったころから、僕には分かっていた。それは様々な偶然が重なって生まれた変えようのない必然だった。そして、僕が宏明に、おめでとう、と言うことも、もちろんそれらの必然の中に

 

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