ったのよ。きっとケンちゃんは今までずーっと行き場もなく、それでも必死で頑張ってきたんだろうなって。今思えば、お父さんとお母さん、ケンちゃんに期待しすぎてたくさん苦しめちゃったね。お母さんはね、良い大学に行って、良い成績を収めなくたって、ケンちゃんのことを大切に思ってるから。どんなことをしていたってお母さんは絶対にケンちゃんの味方だからね。だってケンちゃんはお母さんにとって何にも変えられない大切な子供なんだもの。だから自信を持って、胸を張って生きていってちょうだい。もう一人で抱え込んで苦しまないで」
僕は馬鹿だった。本当に、本当に涙が出るほど馬鹿だった。なぜ人は一人では生きていけないのだろう。なぜ人は誰かのぬくもりが必要なのだろう。なぜ僕はこんな大切なことに気が付かないままここまで来てしまったのだろう。夕暮れの太陽よ、僕を間違いだらけの国から連れ出してくれ。溢れ出す涙よ、僕の中に息衝く酷薄な感情の全てを洗い流してくれ。失った悲しみよ、閉ざされかけた未来をこじ開ける勇気を僕に与えてくれ。もう二度とこんな思いをしたくはないんだ。もう二度とこんな思いをさせたくはないんだ。
駅へと続く商店街は、やはり今日も同じ景色を生み出していた。大量の煙を吐き出している焼鳥屋も、看板だけやけに派手な肉屋も、店構えまでボロボロな古本屋も全ていつもと同じで、僕がここを通い続けた三年間は、僕の心の中に嫌というほど刻み込まれていたことに気が付く。それは、改札口に定期を差し込む時も、プラットホームで急行電車を待っている時も、混雑した電車で押しつぶされている時も、やはり全てが紛れもなく僕の歩いてきた三年間だったのだと思い起こさせる。そして、もう茜と一緒に気だるい授業を受けることも、コッペと宇治やんと三人で購買のチョコクロワッサンを食べて笑い合うこともできないということに悔しさが生まれる。今になって初めてみんなと卒業がしたいという気持ちが溢れ出し、そうできないことにどうしようも苛立ちを覚える。そしてその感情を僕はこれから一生背負って生きていかなければならないのだ。
何も会話がないまま、気が付くと僕と母は最寄りの駅に到着していた。まだ夕方の五時半だというのに、外はすっかり暗くなっていて、冷たい風が道行く人全てを包み込んでいた。
「母さん、先に帰っていてくれないかな。ちょっと寄りたい所があるんだ」