「Liquid SunriseA-1」

 一月二十一日、年が明けて初めての雪が降った。この日は僕の十八回目の誕生日。
「まったく、誕生日に雪が降るなんて、お前ってホント運悪いよな?」
昼休みに宇治やんが僕を見て言った。
「しょうがないだろ。天気はオレの誕生日なんて知らないんだから」
大学入試の中で最も熾烈さを極めるこの時期、僕らのいる三年生のフロアでは、休み時間でも参考書や単語暗記カードを持って勉強している生徒がほとんどだ。それは、僕たち『劣等生三人組』も例外ではなく、と言いたいところだが、僕ら三人は年が明ける前に、すでに推薦入試で手頃な三流大学の合格通知を手にしているため、参考書や単語暗記カードは必要ない。一応は、駄目元で高いレベルの大学を受験するつもりだが、まぁ、受かったら儲けモン。落ちても下でがっちりと柔らかいクッションが守ってくれる。だから僕らに『危機感』などというものは全くと言っていいほどなかった。一流だろうが二流だろうが三流だろうが、父の期待に僕はしっかりと応えているのだし、何も文句は言われないだろう。ならば、そんな僕にとって、大学に行く理由なんてあるのだろうか。だって、僕には行きたい大学も、やりたいことも、将来の夢も、何も決まっていないのだから。ただ、ひとつだけ大学に行く理由を後付けするとしたら『やりたいこと、将来の夢を見つけるため』というのはどうだろう。
「坊や、今日の予定はどうなってるんだい? 誕生日なんだし、二人っきりでデートなんだろ? いやぁ、羨ましいねぇ。青春だねぇ」
コッペがにやけた顔で僕を見つめて言ったので、僕はあえて冷めた口調で答えた。
「いや、久保田は受験勉強で大変だから今日は多分会わない」
「じゃあさ、今日も放課後ゲーセン行こうぜ!」
宇治やんの頭の中にはゲームのことしかないのだろうか。
「おいおい宇治やん。なんで自分の誕生日にゲーセンで過ごさなきゃならないんだよ。勘弁してくれよ」
「別にいいだろ? 何も予定ないんだったら。オレなら誕生日でもゲーセン行きたいぜ」
あの日から一ヶ月半が過ぎた。お互いの気持ちに気付き、初めてのキスをしたあの日から。

(なぁ久保田。オレたち、付き合わないか?)


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